体内時計と暗夜

人口照明が無い世界を想像できますか?それは満天の星と月の明りに照らされた、優しい自然照明の世界です。たまに、人口照明の少ない場所へ行って、月光や星々の灯かりを味わうのは、情緒豊かですし、新たな美の発見に繋がるかもしれません。

私は30年ほど前、都内で街灯を設置する仕事をしていました。「何故ここまで人口照明で明るくするのか?」と、仕事をしながらも疑問でした。それ以前の東京の夜は、それほど明るくはなかったと記憶しています。

今は電気照明が当たり前ですが、歴史的にはガス照明の時代がありました。19世紀初めにロンドンで普及が始まりました。ガス照明以前はローソクとランタンの時代です。夜は月明りと星明りだけでした。

ローソクとランタンの時代には、夜間に一般的な仕事はできません。生活に余裕のある人はローソクを灯して仕事や研究をしたようですが、失明の危険が伴いました。18世紀スイスの大数学者オイラーはローソクの光の中で研究を続け、両目を失明しました。

ヨーロッパの例ですが、18世紀までは睡眠のとり方が現在とは違っていました。長い夜を、一時間程度の覚醒時間を挟んで、睡眠を二度取るのが一般的でした(01)。そして、ローソク等は高価でしたので、自由に使う事はできなかった。人類の歴史は数百万年と言います。その長い年月のほぼ全ては、月と星の灯りでだけでした。

ガス照明、そして電気照明と科学と産業の進歩は進み、誰でも安価に夜を明るく灯す事ができるようになりました。寝る時間も明りを消す必要がないほどに安価になりました。24時間中、明るさに囲まれて生活できるようになりました。

21世紀に入ると、スマートフォン等のデジタル機器が発達し、安くなり、誰もが手に入れる事ができるようになりました。部屋を暗くしてベッドの中でインターネットや映画を楽しむ事ができるようになったのは、2〜30年前からすると夢の時代の到来です。

夜、就寝前にスマホ等でのインターネットには、私もはまりました。また、若い時に睡眠障害気味だったので、部屋を明るくして寝たい気持ちも分かります。しかし残念ながら、人間の体は、夜の照明にとっても弱い事が、最近になって分かってきました。

体内時計の研究者の方々は、就寝時の明るすぎる状況に警笛を鳴らします。部屋の明るさも、スマホの明るさも共にレッドカードです。我々の生命は、夜間の暗がりでの睡眠で、交感神経を休ませ、副交感神経が全身の細胞をメンテナンスする仕組みを創り上げてきました。これが自然治癒力や免疫力です。

入眠前後や睡眠中に、明るい光が眼に入る日が続くと、自然治癒力や免疫力が衰えます。その結果が体調不良、成人病、精神疾患、そしてもっと深刻な病気へと繋がります。肥満の原因にもなり、美容にも良くありません。暗い場所での睡眠が必要です。

どれくらいの暗さが望ましいかと言うと、人口照明の無い時代の暗さ、月明かり星明り程度です。照度で示すと、満月の明るさが0.2ルクスですので、それ以下が望ましい。入眠前のスマホ等は控えて、暗くして寝る事に慣れる事が健康に良いです。

「闇夜で寝る」は日々の生活の中で、自然に回帰する手っ取り早い方法です。そして、安上がりな、効果が実証されている健康法です。上手に生活の中に取り入れる工夫をしてみてくださいね

(01) 「時間と宇宙のすべて」P151

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